忍者ブログ

続・野生チンパンジーのメスの「産休?」 出産直後の子殺しリスクへの対抗戦略の可能性

観察事例:出産直後の新生児をオスが奪って食べる

今回の私たちの研究は、2014年12月に、タンザニア・マハレの野生チンパンジー集団で、たまたまメスの出産とその直後のオスによる新生児の強奪・共食いを目撃したことから始まりました。20頭前後のチンパンジーの集まりを追跡・観察していたとき、デボタという名前のメス(推定14歳)が地面にうずくまった姿勢でいきなり出産し、デボタの後ろに座っていたダーウィンという名前のオス(25歳)が、生まれた瞬間の新生児を拾い上げて走り去り、その後この新生児を食べる様子が観察されました。これは、野生チンパンジーの出産の観察としては6例目、新生児が死産ではなかったとすると(※)集団内での子殺しとしては46例目の報告になりますが、出産とその直後の新生児の強奪・共食いをつづけて観察したものとしては世界初の観察事例になりました。

(※注:この観察は生まれた瞬間に新生児が奪われたため、娩出された新生児の生死を確認できなかった。新生児が死産だった場合には「ダーウィンによる子殺し」ではないことになる。)

チンパンジーの「産休」

デボタの出産時の状況がまったくの無防備だったことから、野生チンパンジーのメスが出産前後にどのような行動をとる傾向があるのかを調べる目的で、「産休」について調べてみました。マハレで蓄積されてきた21年分の長期データを用いて調べたところ、野生チンパンジーのメスが出産前後に不在になる期間(「産休」期間)は、同時期の他のメスの不在期間と比べて長い傾向があることがわかりました。

このことは、マハレの野生チンパンジーのメスは、出産前後に「産休」をとる傾向があることを示しています。デボタがなぜ「産休」をとらず「公衆の面前で」出産したのかはわかりませんが、少なくとも「産休」をとっていれば出産直後に新生児を奪われるリスクはなかったと考えられるため、今回の事例では「産休の欠如」が新生児を奪われる要因となった可能性があります。

推定年齢や集団への移入歴からみるとデボタは初産だったと考えられますが、初産の場合には出産についての十分な経験や知識がなく、いつどのように「産休」をとるのかを判断できなかった可能性もあります。今後さらに初産と経産のメスで出産時にとる行動に違いがあるのか、初産と経産で子殺しのリスクに違いが見られるかどうかなど、引き続き調べていきたいと思います。

まとめ

ダーウィンが新生児をすべて食べてしまい、ダーウィンの糞からも残存物を発見できなかったため、新生児のDNAサンプルを採取できず、ダーウィンがこの新生児の父親であるかどうかを判別することはできませんでした。そのため、子殺しについて提唱されてきたどの仮説が今回の事例にあてはまるのかについては明らかにできませんでした。しかし、メスの「産休」が出産直後の子殺しのリスクを下げる可能性を示すことができたことは、子殺しに対するメスの対抗戦略の進化という問題に新たな手がかりをもたらすと考えています。



匿名希望
PR

野生チンパンジーのメスの「産休?」 出産直後の子殺しリスクへの対抗戦略の可能性

リンク

現代の人間社会では、多くの国で女性が出産前後に産休をとることが認められています。会社で働く女性の出産のために国が法的に定めた産前産後休業制度のほかにも、さまざまな文化で出産後の回復期を定めて出産した女性を保護する慣習があります。たとえば、伝統的に日本では「産後の肥立ち」、中国では「坐月子」、ヨーロッパでは「confinement(lying-in)」と呼ばれる産後の期間がもうけられています。人間社会で出産に関するこうした慣習や制度があるのは、ヒトの出産がきわめて難産であり、出産時の母体にかかる大きなダメージから回復するのに一定の期間が必要であるためです。

ヒトに近縁な現生動物種であるチンパンジーでは、出産前のメスが集団の他のメンバーから離れ、しばらく観察されない不在期間のあとで新生児を抱いて戻ってくるという現象が知られており、メスが集団と一緒に遊動することを「休んで」出産していると考えられることから、研究者の間ではこれを「産休」と呼んできました。

しかし、野生チンパンジーの「産休」の存在を実証した研究はこれまでほとんどなく、また野生下ではチンパンジーの出産の観察事例が非常に少ないこともあり、出産前後のメスの過ごし方や出産前後の母子が抱えるリスクについては十分に調べられてきませんでした。また、野生動物のメスは出産後も自分で採食したり新生児の世話をしたり外敵から身を守ったりする必要があるため、実際には出産後も「休んで」いるわけではありません。そのため、野生チンパンジーで見られる「産休」の機能や進化的意義については、「産休」現象自体がこれまできちんと把握されてこなかったこともあり、長く不明なままでした。

オスによる子殺し vs. メスによる子殺しへの対抗戦略

霊長類を含む多くの哺乳類で、オスによる子殺しの事例が報告されています。その要因のひとつとして提案されているのが性選択仮説です。多くの哺乳類では、メスが子供に授乳している間は排卵を再開せず、次の子供を受胎しません。そのため、オスは自分と血がつながっていない離乳前の乳児を殺すことによって、メスの排卵の再開を早めさせ、自分の子を受胎させることが可能になることから、子殺しはオスにとっての繁殖上の利益があるという仮説です。

野生チンパンジーでは、これまで9つの異なる集団で45例の集団内での子殺しの報告がありましたが、性選択仮説のほか、栄養仮説(殺した乳児を食べることによって栄養的な利益を得る)や、資源競合仮説(食物資源や繁殖資源を争う可能性のある将来的な競合相手を殺すことによって資源獲得上の利益を得る)などの仮説が提案されてきました。

一方、メスにとっては、自分の子を殺されることは繁殖上の大きな不利益となるため、オスによる子殺しのリスクに対して、さまざまな対抗戦略を進化させてきたと考えられています。メスによる子殺しへの対抗戦略仮説のひとつであるリスク回避仮説では、出産後のメスが単独で過ごす時間を増やしたり、子殺しのリスクが高い状況から離れたりすることで、子殺しの危険を回避することが示唆されています。

メスにすばやく排卵を再開させるというオスにとっての繁殖上の利益を考えると出産直後の子殺しがもっとも合理的だと考えられますが、野生チンパンジー集団ではこれまで出産直後の子殺しは観察されたことがありませんでした。そもそも野生チンパンジー集団では出産の観察も少なく、これまでわずか5例しか報告されていません。この出産観察事例の少なさは、野生チンパンジーのメスが「産休」をとるため、つまり出産前後に姿を隠すためと考えられてきました。

しかし、観察が難しいこともあり、野生チンパンジーのメスが出産前後にどのような行動をしているのか、そもそも本当に「産休」と呼ばれる現象があるのか、またチンパンジーにも「産休」があるとしてそれにはどのような機能があるのか、などについてはこれまでほとんど調べられてきませんでした。




匿名希望

オランウータンの特殊性(性・親和系)

人類の祖先と考えられるオランウータン。

人類に近しいと思う身体的特徴が多いが、共認機能上の類似点・相違点について、気になる点がいくつかある。

単なる学説ではなく観察結果なので、事実の追求においては非常に参考になるため、いくつかの特徴を挙げておく。

**************************************

※以下、サル学の現在(著:立花隆)より要約紹介。

●授乳中も交尾を行う
(サルも含めた哺乳類は、基本的に授乳中は発情→交尾はしないが)生まれて2カ月にもならない赤ん坊を持つ母親が交尾しているところを観察したこともある。

●交尾の前に親密関係を築く
ふだんはオスとメスでもお互いによそよそしい関係にあるのに、交尾するようになるには、その前段階で、二匹で連れ立って仲良く行動する、というのがある。あるオスとメスが連れ立って移動していたとき、川に差し掛かった。そのとき、腕を怪我していた一方を心配して、もう一匹が迎えに戻ってきたことがある。こういう心遣いは、日常の生活では絶対にない。

●サルの中では例外的に濃厚な交尾
ニホンザルにしてもチンパンジーにしても、1回1回の交尾はアッという間に終わるが、オランウータンの場合は、短くても数分以上、長いと30分くらいしている。激しいときは20分続けて、ちょっと休んでまた10分ということもあった。サルには珍しく、対面位も多い。二匹とも、どこがお互いの頭でどこが足なのかわからないくらいアクロバティックに抱き合って、オスがしっかりトラストして、メスがまたそれに応じてすごくなまめかしい声をあげて鳴き続ける。本当に人間のセックスを見ているみたいにリアルでエロティック。
(ちなみに、性的動物として有名なピグミーチンパンジーも、オスメス同士は基本は後背位で、メス同士のホカホカが対面位。一方、ゴリラは、4種類くらいの体位が確認されており、仰向けに寝たメスの足の間にオスがかがみ込んで入る正常位もある)

●オランウータンは毛づくろいをしない
オランウータンというのは、他のほとんどのサルがする、毛づくろいというのを全くやらない。毛づくろいというのは、サルの世界では最もポピュラーな親密さの表現だが、それが全くない。母子のあいだでもない。



匿名希望

チンパンジーとボノボの性行動の違い

チンパンジーとボノボは近縁で同じ父系集団であるにも関わらず、様々な性行動の違いが見られ興味深い。

・チンパンジーの雌は5~6年に一度しか出産せず、妊娠や子育て中は殆ど発情しない。故に雄は交尾の機会を巡って激しい競争にさらされる。平均的なチンパンジーの集団である雄10頭、雌35頭を例にとると、同時期に発情している雌の数は1.5頭となり、10頭の雄が1.5頭の雌を奪い合う状態になる。

ボノボの雌は、妊娠中も発情し、出産後の子育て中も継続して発情している。平均的なボノボの集団である雄10頭、雌10頭を例にとると、同時期に発情している雌は3~4頭いる。


・チンパンジーの場合、交尾の決定権は雄にある。高順位の雄が発情雌を囲い込むことが通常だが、2~3頭が連携してボス雄を追い出し交尾する、低順位の雄が駆け落ちする等のパワーゲームが発生することもしばしば。雌は基本的に高順位の雄を受け入れるしか選択肢はない。

ボノボの場合、交尾の最終的な決定権は雌にある。雄同士の性闘争が弱く順位に関係なく雌と交尾ができるため、雌側がどの雄と交尾するかを決めることになる。雄は雌に好まれるように努力している。


・チンパンジーの雌は上述したように生涯を通じた発情期は短いが、発情期間中の交尾の頻度はかなり多い。平均すると1時間に2.9回交尾し、1日で10頭以上の雄と50回以上交尾することも珍しくない。また、雌が妊娠する可能性が高まる期間になると交尾にも変化が現れる。圧倒的な高順位のボス雄がいる場合は、ボス雄の独占的な交尾が生じ、圧倒的なボス雄がいない場合は多様な雄との交尾頻度がさらに上昇し乱婚的になる。

ボノボの場合、雄と雌の交尾だけでなく、雄同士や雌同士の性行動(性器こすり、尻つけ等)が行われ親和関係を強化している。性行動は他集団と接したときや、新入りが年長の雄雌に近づくときなど、緊張や興奮を緩和する場合が多い。


・チンパンジーもボノボも同じ父系集団で雌同士の血縁関係だが雌同士の関係は違いが出ている。チンパンジーの場合、雌同士の関係は疎遠で、発情していない雌は自分の子どもとだけの母子パーティで行動していることが多い。

ボノボの場合、お互いの性行動で親和的関係を保ち、非発情期であっても一緒に遊動している。血縁関係のある雄同士よりも親和的関係を築き、雄に対し結束して立ち向かう場面もある。



匿名希望

ボノボは、オスの血みどろの性闘争を、「メスが妊娠可能でない時期もSEXを受けいれる」ことで抑止した。

オナガザルとの縄張り闘争に敗れた大型類人猿の共通祖先テナガザルは、縄張りを確保できる余地がないため、授乳期間(妊娠+子育て)を2倍に延長することによって、親和機能と知能を進化させる方向に向かった。
この共通祖先時に形成された「授乳期間(妊娠+子育て)の延長」が、大型類人猿の生殖の共通様式。

真猿以降の大型類人猿、ゴリラもチンパンジーもボノボもオランウータンも、哺乳類由来のオスの血みどろの性闘争(本能)(実現論1_3_04)をいかに抑止するかは共通課題だが、その適応方法の違いによって、それぞれの性質、生態、集団形態が異なっていった。
とりわけ、約100万年前にチンパンジーから分化したボノボは、メスの肉体改造によりチンパンジーと180°異なる戦略をとる。

チンパンジーのメスは、子どもを産むと離乳期までの3年半~4年ほど排卵が止まる。それから発情を再開するが、6ヶ月から9ヶ月くらいでまた妊娠するので再び排卵が止まる。
そのため、性交渉ができるのは5~6年周期で、出産する狭間の6ヶ月くらい。しかも1ヶ月に10日間ほどでなので、5~6年間に60日間程度しか発情しない。
そのため、発情期のメスを巡るオス同士の性闘争は非常に激しく、集団内のオスの序列闘争が熾烈で、性交渉は序列上位へ集中する。

それに対して、ボノボのメスも出産して3~4年経たないと排卵は再開しないが、発情だけは出産の約1年後に再開するようになっている。(※「ニセ発情」)
ニセ発情によって、ボノボはチンパンジーに比べて8~10倍の期間、性交渉が可能になる。
チンパンジーの場合、仮に30頭のメスがいても、オスは10頭ぐらい。それに対し、ボノボはオスとメスは同数。そのためオス1頭当たりのメスの数はチンパンジーよりも少なくなるが、メスが10頭いたら常に4頭くらいは、ニセ発情も含めて発情している。そうなると第一位のオス1頭がメスたちを独占することが無理になり、チンパンジーと比べると他のオスにも性交渉の機会が増え、乱婚に近い。

そして、チンパンジーの場合、発情しているメスは第一位のオスに迫られたら断れないが、ボノボはたとえ第一位のオスが一生懸命誘っても、最終的にメスが首を縦に振らなければ交尾できない。オスはじっと待つしかなく、たとえ第一位のオスでも、メスに受け入れられなかったら離れていくしかない。
ボノボは、オスの血みどろの性闘争を、「メスが妊娠可能でない時期もSEXを受けいれる」ことで抑止した。

また、(チンパンジーの)力の原理ではなく女主導の性(セックス)で、オスの血みどろの性闘争を抑止したボノボは、別の群れと出会ってもケンカはほとんどせず、メス同士が率先して混ざって一緒に食事をしたり、1 週間くらいともに行動したりする。

Q.なぜ、ボノボはこの転換が可能だったのか?
チンパンジーもボノボもアフリカの赤道をまたぎ、森と草原がモザイク状に広がる乾燥地域から熱帯雨林の環境に生息しているが、中部アフリカのコンゴ盆地を蛇行しながら流れる延長4700kmのコンゴ川が、ボノボとチンパンジーの生息地を遮っている。
チンパンジーもゴリラもコンゴ川の外側(右岸側)になるが、ボノボはコンゴ川によってそれまで未踏だったコンゴ川の内側(左岸側)、巨大な湿地林が広がり木の実や川の餌が豊富な場所に生息する。
(※ヒトの化石もコンゴ川の外側からしか発見されていない。)
そして、チンパンジーは浅い川でも水に浸かることを嫌がるが、ボノボは川に入ってヤゴや川虫を食べたりする。
このことから、チンパンジーやゴリラに比べ、ボノボの置かれた外圧は低かったと考えられ、「外圧低下」がチンパンジーとボノボの性闘争を抑止する方法→生態を大きく異なるものにした要因と考えられる。


※参照:リンクヒトが「ボノボ」から学ぶこと ~コンゴ川を渡った平和主義者たち~ 京都大学霊長類研究所教授 古市 剛史




麻丘東出

カレンダー

02 2020/03 04
S M T W T F S
3 4 6 7
8 9 10 11 13 14
15 16 18 19 20 21
22 23 25 26 27
29 30 31

ランキング

にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
お勧めサイトランキングへ

カウンター

カテゴリー

最新コメント

[11/30 無飼]
[11/30 ムカイ]
[11/30 ムカイ]
[11/22 JoanneGuerrero]
[02/07 言霊百神]

ブログ内検索

バーコード

P R